デジタル化・AI導入補助金の使い方
この記事の結論
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)は、中小企業・小規模事業者が、事務局に登録されたITツール(AIを含むソフトウェアなど)を導入する費用の一部を補助する制度です。IT導入支援事業者と共同で申請し、交付決定を受けてから契約する流れで、導入後も数年にわたる効果報告が求められます。
補助金は、AI活用の費用負担を軽くする有力な手段です。一方で、要件や手順を知らないまま進めると、対象外になったり、補助金に合わせて計画が歪んだりすることがあります。この記事では、公式サイトと公募要領で確かめた内容をもとに、使い方の要点を整理します。数字や日程は公募回ごとに変わることがあるため、申請の際は最新の公募要領をご確認ください。
この記事でわかること
- 制度の目的・名称と、5つの枠の補助率・補助額
- 申請の要件と、IT導入支援事業者と進める申請の流れ
- 事前の準備と、AI活用の計画を補助金に合わせて歪めないための考え方
どのような制度ですか?
名称と目的
正式な事業名は「中小企業デジタル化・AI導入支援事業」で、2026年度の公募は「デジタル化・AI導入補助金2026」と呼ばれています。中小企業庁の資料では、令和7年度補正予算事業から「IT導入補助金」が「デジタル化・AI導入補助金」に改称されたとされています。
公募要領では、事業の目的を、働き方改革・賃上げ・インボイス制度などの制度変更に対応するため、生産性向上に役立つITツールの導入費用の一部を補助し、中小企業・小規模事業者等の生産性向上を図ることとしています。補助対象のITツールのうちソフトウェアについては「AIを含む」と明記されています。
政府の第Ⅱ期人工知能基本計画(2026年7月閣議決定)でも、中堅・中小企業のAI導入の支援が施策に挙げられており、この補助金はその代表的な手段の一つに当たります。
運営の仕組み
事業は独立行政法人中小企業基盤整備機構が実施し、中小企業庁の監督のもと、TOPPAN株式会社が事務局を運営しています。補助の対象になるのは、事務局に登録された「IT導入支援事業者」が提供し、事前に審査を受けて登録された「ITツール」です。申請者とIT導入支援事業者は共同事業体として申請します(複数者連携デジタル化・AI導入枠は流れが一部異なります)。
どの枠を使えばよいですか?
2026年10月25日時点で公式サイトに掲載されている枠は、次の5つです。
| 枠 | 主な対象 | 補助率 | 補助額 |
|---|---|---|---|
| 通常枠 | 業務プロセスを持つソフトウェア、クラウド利用料(最大2年分)、導入関連費 | 1/2以内(最低賃金近傍の事業者は2/3以内) | 1プロセス以上:5万円以上150万円未満/4プロセス以上:150万円以上450万円以下 |
| インボイス枠(インボイス対応類型) | 会計・受発注・決済の機能を持つソフトウェア、PC・レジ等 | ソフトウェア:50万円以下の部分は3/4以内(小規模事業者は4/5以内)、50万円超の部分は2/3以内/ハードウェア:1/2以内 | ソフトウェア:350万円以下(1機能は50万円以下)/PC・タブレット等:10万円以下/レジ・券売機等:20万円以下 |
| インボイス枠(電子取引類型) | 発注者が導入し、受注者の中小企業にアカウントを無償で提供する受発注ソフト | 中小企業・小規模事業者等:2/3以内/その他の事業者等:1/2以内 | 350万円以下 |
| セキュリティ対策推進枠 | 「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」掲載のサービス利用料(最大2年分) | 中小企業:1/2以内/小規模事業者:2/3以内 | 5万円〜150万円 |
| 複数者連携デジタル化・AI導入枠 | 商工団体やコンソーシアムなど複数の事業者が連携して導入するITツール等 | 経費の区分により異なる | 基盤導入経費と消費動向等分析経費の合計で3,000万円まで ほか |
AI活用の観点では、通常枠が中心になります。通常枠では、「顧客対応・販売支援」「会計・財務・経営」など、公募要領に示された業務プロセスを1つ以上持つソフトウェアが必要で、汎用的なツールだけの申請はできません。AIを搭載しているかどうかを含む機能の概要は、公式サイトの「ITツール検索」で確かめられます。
通常枠の補助率を2/3以内に引き上げる条件(最低賃金近傍の従業員の割合)は、第7次公募回から、令和8年度の地域別最低賃金の改定に合わせて対象期間などが変わりました。自社が当てはまるかは、最新の公募要領をご確認ください。
申請できる会社と要件は?
対象になる会社
日本国内で法人登記され、国内で事業を営む中小企業・小規模事業者等が対象です。資本金または従業員数で業種ごとに上限が決まっており、たとえば製造業・建設業・運輸業は資本金3億円以下または従業員300人以下、小売業は資本金5,000万円以下または従業員50人以下です。医療法人・社会福祉法人・NPO法人なども対象に含まれます。一方、大企業が一定以上の株式を持つ会社などは対象外です。
主な申請要件(通常枠)
公募要領(通常枠、第7回公募〜)に示された主な要件は、次のとおりです。
- GビズIDプライムを取得していること(発行までおおむね2週間)
- IPAのSECURITY ACTIONで「一つ星」または「二つ星」を宣言していること(ID発行までおおむね2〜3日)
- 事業場内の最低賃金が地域別最低賃金以上であること
- 3年間の事業計画で、労働生産性を1年後に3%以上、計画期間の年平均で3%以上向上させること(過去に一定の枠で交付決定を受けた事業者は4%以上)
- 申請額や過去の交付実績に応じて、1人当たり給与支給総額の伸びや事業場内最低賃金の水準など、賃上げの計画を立てて従業員に表明していること
賃上げの要件は第7次公募回から対象が広がり、通常枠以外の枠にも、1人当たり給与支給総額の向上に関する要件が追加されています。要件を満たせなかった場合は、補助金の全部または一部の返還を求められることがあります。
申請はどのように進めますか?
公式サイトの手続きフローをもとに、流れを整理します。
- 制度を理解する:公式サイトと公募要領を読み、使う枠を決めます。
- 事前の手続きを済ませる:GビズIDプライムの取得と、SECURITY ACTIONの宣言を行います。時間がかかるため、早めに始めます。
- IT導入支援事業者とITツールを選ぶ:自社の課題に合うツールと、その登録事業者を選びます。
- 交付申請を共同で作る:IT導入支援事業者から「申請マイページ」に招待を受け、申請者の情報と書類を入力します。ツールの情報と事業計画の数値はIT導入支援事業者が入力し、最後に申請者が内容を確認して宣誓・提出します。
- 交付決定を受ける:審査が終わると通知され、補助事業を始められます。
- 契約・導入・支払いを行い、実績を報告する:交付決定のあとに契約・発注し、納品・支払いを済ませて実績を報告します。
- 効果を報告する:導入後、3年度にわたり労働生産性や賃金などの数値を報告します。
2026年10月時点の公募の状況
公式サイトの事業スケジュールでは、交付申請の受付は2026年3月30日に始まり、2026年10月25日時点では、通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠(6次締切分)と、複数者連携デジタル化・AI導入枠(3次締切分)のいずれも、締切が2026年10月30日(金)17時、交付決定日が2026年12月10日(予定)と掲載されています。その次の回(通常枠などは7次、複数者連携デジタル化・AI導入枠は4次の締切分)の日程は、確定しだい公表するとされています。※ 次の締切分の日程は要確認
事前に何を準備すればよいですか?
- 課題と業務の整理:どの業務の、どの手間を減らしたいのかを書き出します。審査でも、経営課題と導入するツールの効果が合っているかが見られます。
- 数字の準備:営業利益・人件費・減価償却費・総労働時間・給与支給総額など、労働生産性と賃金の計算に使う数字を、前年度の決算から揃えます。
- 賃上げ計画の検討:要件に当てはまる場合は、無理のない賃上げ計画を立て、従業員への表明の方法を決めます。
- 社内ルールの用意:AIツールを導入する場合は、利用規程や入力の禁止事項もあわせて決めておくと、導入後の定着が早まります(「AI事業者ガイドラインの読み方」参照)。
- 加点項目の確認:クラウド製品の選定、セキュリティサービスの選定、中小機構の「IT戦略ナビwith」の実施などが加点の対象として挙げられています。
AI活用の計画を補助金に合わせて歪めないためには?
補助金は、計画を実行するための「手段」です。次の考え方で進めると、補助金に振り回されにくくなります。
- 先に計画、あとで補助金:まず補助金がなくても実行したいAI活用の計画を作り、そのうえで、補助の対象に合う部分があるかを確かめます。
- 対象外の部分も計画に残す:データの整備、社内研修、汎用的な生成AIサービスなど、補助の対象になりにくい取り組みも、成果には欠かせないことがあります。対象外だからといって計画から外さないようにします。
- 導入後の運用費まで見積もる:クラウド利用料の補助は最大2年分です。3年目以降の費用と、効果報告が続く期間の運用体制を含めて判断します。
- ツールの都合で業務を決めない:登録されたツールから選ぶ仕組みのため、ツールありきになりがちです。業務の流れと必要な機能を先に決め、それに合うツールを選びます。
- 申請の時期を急がない:締切に合わせて準備不足のまま申請するよりも、次の回に回して計画を固める方が、結果として成果につながることがあります。
注意しておくことは?
- 交付決定前の契約は対象外:交付決定前に契約・発注・納品・支払いを行うと、補助を受けられません(スマートレジの事前着手制度など、限られた例外があります)。
- 申請は原則1回:通常枠は、交付申請期間中に1事業者あたり1申請です。IT導入補助金2025の通常枠などで交付決定を受けた事業者は、交付決定日から12か月以内に通常枠へ申請できません。
- 支払い方法の決まり:IT導入支援事業者への支払いは、原則として銀行振込またはクレジットカードの1回払いで、補助事業者名義の口座から行います。
- 書類の保管:契約書・請求書・領収書などは、補助事業が終わった年度の終了後5年間の保管が求められます。
- 辞退・解約の影響:導入したツールを途中で解約した場合などは辞退の手続きが必要で、返還が生じることがあります。
- ID・パスワードの管理:申請マイページのログイン情報は、IT導入支援事業者を含む第三者に渡さないこととされています。
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関連するひな形・ガイド・用語
よくあるご質問
QIT導入補助金とデジタル化・AI導入補助金は別の制度ですか?
A同じ事業の名称が変わったものです。中小企業庁の資料では、令和7年度補正予算事業から「IT導入補助金」が「デジタル化・AI導入補助金」に改称されたとされています。事業の正式名称は「中小企業デジタル化・AI導入支援事業」です。
Q生成AIのサービスだけを申請できますか?
A補助の対象は、IT導入支援事業者が事務局に登録したITツールに限られます。公募要領ではソフトウェアに「AIを含む」とされていますが、通常枠では業務プロセスを持つソフトウェアが必要で、汎用ツールのみの申請はできません。対象かどうかは、公式サイトのITツール検索とIT導入支援事業者に確認してください。
Q先に契約して、あとから申請できますか?
A通常は、交付決定前に契約・発注・納品・支払いを行った経費は補助の対象になりません。2026年9月に案内されたスマートレジの事前着手制度のような例外もありますが、対象や時期が限られます。最新の公募要領をご確認ください。
Q補助金を受けたあとに義務はありますか?
A事業実施後、数年にわたり労働生産性などの効果報告を行う必要があります。賃上げが要件となる申請では、目標を達成できない場合に補助金の返還を求められることがあります。
Q2026年10月時点で、次の締切はいつですか?
A公式サイトの事業スケジュールでは、各枠の締切が2026年10月30日(金)17時と掲載されています。その次の回の日程は随時公表とされているため、公式サイトで最新の情報をご確認ください。
この記事に出てくる用語
次の一歩
出典
- デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト
- デジタル化・AI導入補助金2026 制度概要
- デジタル化・AI導入補助金2026 事業スケジュール
- デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠
- デジタル化・AI導入補助金2026 インボイス枠(インボイス対応類型)
- デジタル化・AI導入補助金2026 インボイス枠(電子取引類型)
- デジタル化・AI導入補助金2026 セキュリティ対策推進枠
- デジタル化・AI導入補助金2026 複数者連携デジタル化・AI導入枠
- デジタル化・AI導入補助金2026 新規申請・手続きフロー詳細
- デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)第7回公募~(2026年10月9日、PDF)
- 第7次公募回以降における制度変更のお知らせ(2026年10月9日)
- スマートレジの導入(事前着手制度)のお知らせ(2026年9月24日)
- 中小企業庁 中小企業デジタル化・AI導入支援事業 概要(令和8年4月、PDF)
- 第Ⅱ期人工知能基本計画(概要)令和8年7月14日閣議決定(PDF)
最終確認日:2026-10-25