プロンプトエンジニアリング入門 AIに伝わる頼み方の基本

執筆:桐谷 彰人更新 2026-10-25制度の最終確認 2026-10-25出典 4件

この記事の結論

プロンプトエンジニアリングとは、AIに期待どおりの答えを出してもらうための頼み方の工夫です。「役割」「目的」「背景」「条件」「例」の5つを具体的に伝え、返ってきた答えを見て頼み方を直すことを繰り返すと、仕事で使える答えが得やすくなります。

生成AIを使ってみて、「思ったような答えが返ってこない」と感じたことはないでしょうか。その多くは、AIの性能よりも、頼み方を少し変えるだけで改善できます。専門的な技術は要りません。人に仕事を頼むときと同じ心配りが、そのまま役立ちます。

この記事でわかること

  • プロンプトエンジニアリングの考え方と、AIに伝えるときの前提
  • よい答えを引き出す5つの要素と、その使い方
  • 実際の仕事で使える頼み方の例と、続けて上達するコツ

プロンプトエンジニアリングとは何ですか?

プロンプトとは、AIに入力する指示や質問のことです。プロンプトエンジニアリングは、そのプロンプトを工夫して、目的に合った答えを引き出すことを指します。

名前は難しそうですが、中身は「伝え方の工夫」です。AIを、知識は豊富でも自分の会社や仕事の事情はまだ知らない、頼れる新しい同僚だと考えるとわかりやすくなります。

経済産業省とIPAの「デジタルスキル標準」にも、2024年に、個人が業務で生成AIを活用する例などが補記されました。AIへの頼み方は、職種を問わず役立つ基本の力になりつつあります。

なぜ頼み方で答えが変わるのですか?

人であれば、「いつもの感じでお願い」と言えば、相手が状況を察してくれることがあります。AIは、伝えられていない事情を察することが苦手です。

例えば「マーケティングのアイデアを教えて」と頼むと、AIは業種も商品も対象の顧客も知らないまま答えることになります。その結果、どの会社にも当てはまる一般的な答えになりがちです。

曖昧な頼み方には、曖昧な答えが返ってきます。反対に、必要な情報を具体的に伝えるほど、答えは自分の状況に近づきます。AIの提供会社が公開している手引きでも、明確で具体的に指示することが基本として挙げられています。

よい答えを引き出す5つの要素は何ですか?

① 役割:AIにどんな立場で考えてほしいか

「あなたは、中小企業向けの経理の実務に詳しい担当者です」のように、立場を伝えます。答えの視点や言葉選びが、その立場に合ったものになりやすくなります。

② 目的:何をしてほしいのか

「以下の文章を200字程度に要約してください」「新商品の紹介文の案を3つ出してください」のように、してほしいことをはっきり書きます。動詞で終わる一文にすると伝わりやすくなります。

③ 背景:判断に必要な事情

誰に向けたものか、なぜ必要なのか、どんな状況なのかを伝えます。

  • 読み手:取引先の購買担当者
  • 状況:来月から価格を改定するため、事前に案内したい
  • 気をつけたい点:長いお付き合いのある取引先なので、丁寧に伝えたい

背景を伝えると、AIは状況に合った答えを考えやすくなります。

④ 条件:答えの形や守ってほしいこと

文字数、書式(箇条書き、表など)、文体、使ってほしくない言葉などを指定します。「です・ます調で」「400字以内で」「表にまとめて」といった指定です。

⑤ 例:期待する答えの見本

望ましい答えの見本を一つか二つ見せると、AIはその調子や形を参考にします。言葉で説明しにくい雰囲気を伝えたいときに特に役立ちます。見本を示す方法はフューショット(少数の例を示す方法)とも呼ばれます。

5つの要素は、毎回すべて書く必要はありません。答えが期待とずれたとき、どの要素が足りなかったかを振り返る目安として使うと効率的です。

実際の仕事ではどう組み合わせますか?

社内向けの研修の案内文を作る場面で比べてみます。

ひと言だけの頼み方
「研修の案内を書いて」

これでは、何の研修か、誰向けか、どんな調子で書けばよいかがわかりません。

5つの要素を入れた頼み方

  • 役割:あなたは、社内の人材育成を担当する総務部の社員です。
  • 目的:全社員向けに、生成AIの基礎研修の案内文を作ってください。
  • 背景:研修は来月、オンラインで1時間行います。初めてAIを使う人にも参加してほしいと考えています。参加は任意です。
  • 条件:です・ます調で、300字程度。件名も1案付けてください。不安をあおる表現は使わないでください。
  • 例:「ふだんの仕事を少し楽にするヒントを、一緒に見つけましょう」のような、やわらかい調子でお願いします。

ここまで伝えると、手直しの少ない案内文が返ってきやすくなります。

もっと上達するには、どうすればよいですか?

① 一度で決めようとしない

最初の答えが期待どおりでなくても、問題ありません。「もう少し短く」「具体例を一つ加えて」「別の切り口で3案」のように、会話を続けて直していきます。

② 長い資料は区切って渡す

指示と資料が混ざると、AIが取り違えることがあります。「ここからが資料です」と区切りを示したり、見出しを付けたりすると伝わりやすくなります。提供会社の手引きでも、記号やタグで構造を示す方法が紹介されています。

③ 大きな仕事は段階に分ける

「資料を読む」「要点を抜き出す」「文章にまとめる」のように、段階を分けて頼むと、それぞれの質が上がりやすくなります。

④ 答えは確かめてから使う

AIは、もっともらしい誤りを出すことがあります。数字、固有名詞、日付、制度などは、原典で確かめてから使います。

⑤ 入れてよい情報を守る

会社のルールで認められたAIサービスを使い、顧客の個人情報や機密情報の扱いは社内の決まりに従います。個人情報保護委員会も、生成AIサービスに個人情報を入力する際の注意を呼びかけています。

⑥ うまくいった頼み方を残す

よく使う頼み方は、ひな形として保存しておくと、次から素早く使えます。チームで共有すれば、組織全体の使い方も上達していきます。

AIとのやり取りは、慣れるほど楽しくなります。まずは身近な仕事を一つ選び、5つの要素を意識して頼んでみてください。

関連するひな形・ガイド・用語

よくあるご質問

Q5つの要素は、毎回すべて書かないといけませんか?

A毎回すべてをそろえる必要はありません。簡単な質問なら目的だけで足りることもあります。答えが期待とずれたときに、足りない要素を補っていくと効率的です。

Qよく使う頼み方は、どう管理すればよいですか?

Aうまくいった頼み方を、用途ごとにひな形として保存しておくのがおすすめです。チームで共有すると、使い方の差が小さくなり、新しく使い始める人の助けにもなります。

QAIの種類によって、頼み方を変える必要はありますか?

A基本の考え方は共通です。ただし、AIの提供会社はそれぞれ使い方の手引きを公開しており、得意な書き方に違いがあることもあります。よく使うAIについては、提供会社の手引きに一度目を通しておくとよいでしょう。

この記事に出てくる用語

次の一歩

出典

  1. Anthropic「Prompt engineering overview」
  2. OpenAI「Prompt engineering」
  3. IPA プレスリリース「DXを推進する人材向けの『DX推進スキル標準』に生成AIに関する補記などを追加」(2024年7月8日)
  4. 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」

最終確認日:2026-10-25